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10年の北海道での山籠りを経て、中央線に舞い戻った男。鹿野おしりの街道爆裂サブカル日記。

偏愛して妄執した哀愁のアニメ感想~四畳半神話大系~

四畳半神話大系 コンプリート ブルーレイBOX (全11話, 275分) 森見登美彦 アニメ [Blu-ray] [Import] [PAL, リージョンB, 再生環境をご確認ください, リージョンフリー又はPAL再生可のプレイヤーで再生する必要があります]

 

四畳半神話大系とは、可能性のアニメである。

 

以上、完。としてしまうのはいささか暴論である。文筆家である温厚ないささか先生であっても、激昂して頭が剥げ上がってしまうほどの暴論だ。そんな暴論だけ吐いてブログを終えてしまっては、私はブログの神様に見放されてあわやブログ界の誹謗中傷地獄に落とされ、針の筵の中で全身に突き刺さる針を取り除けないままに、じたばたと悶え苦しむ姿を全世界に配信する糞エンターテイナーとして人生を終えるであろう。<完>

完、ではないまだ続く。四畳半神話大系とは森見登美彦氏による小説で太田出版から2005年に出版された。その後、2010年にフジテレビ系ノイタミナで湯浅政昭監督、上田誠脚本でアニメ化されたアニメ作品である。大学生であるところの<私>がモノローグ一杯で語りまくる青春活劇であり、「あのときああしていれば・・・!」という悔恨から人生をさかのぼり一つ一つの可能性を検証する一話完結型で見やすいアニメである。

アニメで披露される京都の大学生の生態もまた楽しいものだ。木屋町で飲んだり、鴨川でカップルに殺意を憶えたり、毒霧を吹いたり、大きなカステラを一人で食べたり、屁理屈踊りを町中で舞ったり、毒霧を吹いたり、年上の女性にどぎまぎしたり、鱧を湯引きしたり、湯引きした鱧に梅を乗せてみたり、阿呆な大学生の阿呆な生態をきめ細やかな描写を重ねて丁寧で表現することに成功している。

だが、私がこのアニメで一番言いたいのは、「四畳半神話大系は可能性のアニメである。」ということである。話の中では、夢と希望に溢れた大学生活を始めた<私>が、その元来の性質である生真面目さや尊大な羞恥心、傲慢な自尊心によって大学生活を駄目にしていく中で、バラ色の大学生活を目指してなんども大学生活をループするといった形で進んでいくわけだ。大学入学の時に受け取ったサークル勧誘のビラ、それらすべてが可能性であった・・・。しかしながら、人は可能性を摘み取っていくことで大人になっていく。進学、就職、結婚。これは無限に広がる可能性の海の中に、えいやっ!っと手を突っ込んで海産物を捕まえる行為に似ている。海の中には鱧もメダカも蟹も雲丹も鮑もいるが、捕まえられるのは両手で掴んだものだけだ。それがたとい、穴の開いた片方だけの長靴だったとしても後悔してはいけない。自分の手で掴んだものだけしか得られるものはない。人生に抽選やリセマラはないのである。そんな四畳半神話大系で一番不毛な学生生活を送った<私>が、一番最良の大学生活を手に入れるというのは何とも示唆に富んだ内容だったと思う。

一方、小津は七面六脾の活躍、権謀術数張り巡らせて、様々な可能性を少しずつ育て上げて可能性に満ち満ちた大学生活を送っている。人生には2種類のタイプがいる<私>みたいなタイプか小津みたいなタイプだ。あまり器用ではない<私>みたいなタイプの人は沈思黙考、考えて熟慮を重ねて人生を選んでいくより外ならない。しかしながら、時として阿呆になることも必要である。阿呆に生きるというのは対外的に見ての話であり、本人は阿呆とは思ってはおらず質実剛健真正直なものであるが、客観的に見て「自分は阿呆ではないか?」という能力は、真面目に阿呆道を進んでいく上では必要である。阿呆に生きることと、最良の可能性を掴むこと、それが何よりもより良い人生を生きていく上だ大切なことだと私はこの物語から学んだ。以上

 

 <完>